株式会社 アイソー




2009年06月の日記

夏の高校野球県大会近づく

[2009年06月30日(火曜日)|No.1651]

夏の高校野球選手権県大会の組合せが決まりました。我が母校は2日目の12日、島田球場の第2試合で浜松東高と対戦します。
 
組合せによっては1回戦、共に優勝候補の静岡−常葉橘戦とか、飛龍−浜松工戦、また勝者が浜松商と対戦したりして、1回戦から目の離せない好ゲ−ムが続くことになります。
 
さて母校・沼津東高の今年はどう占えるのでしょうか。昨年は1回戦、2回戦と地元・あしたか球場で、桐陽高、掛川工を接戦で下し、迎えた浜松球場での常葉菊川戦、序盤3−0とリ−ドし、あわやの展開で力の入った一戦でした。
 
結果的には3−4と敗れてしまったわけですが、この優勝校・常葉菊川高が甲子園の決勝で大敗するまで、一番苦しんだ試合ではなかったかと思われるものです。
 
その菊川戦、もう少しこちらを見くびったままでいたらと思った試合でしたが、こちらが押せ押せム−ドになりかけた途端、エ−ス戸狩くんへのスイッチで、それ以降、手も足も出なかったものです。
 
ですが、その前の投手から放った5連打も見事でしたし、こちらの投手・野中君の緩急織り交ぜた、頭脳的なピッチングが光るゲ−ムだったと思います。
 
こうした対戦校とは練習量からして違うわけで、実力的にも少なくない開きがあるにもかかわらず、本当によくやったと思わせられたものでした。
 
この頑張りが「自分たちもやればできるんだ」という思いになり、下級生にも引き継がれ、予想外の21世紀枠静岡県候補という、秋の好結果をもたらしたものと思われます。
 
従って悲願達成という意味では、決してこの夏の大会は侮れないものです。聞くと、こう言ったら相手校には失礼ですが、名前だけではそんなに強く感じないものの、秋と春の成績を見ると、なかなか強豪と互角のゲ−ムをしているというのです。
 
ですから決して油断はできないものですが、比較的良いくじを引いた以上、昨年以上の成績を何とか残してもらいたいものです。
 
とにかく、つまらないミスをなくすことです。また昨秋、活躍したエ−ス・高橋君の復調を何よりも望むものですが、監督の言われるように、1点にこだわった試合をやり続けることです。
 
重なっている他の用事をキャンセルしてまで、この時期、最優先で追っかけ続けようと思っている手前、第1シ−ドの静岡学園戦までは息が絶えないよう、何とか頑張ってもらえることを願いたいものです。


けれんみのない大きな魅力

[2009年06月29日(月曜日)|No.1650]

どういうわけか、日曜日になると雨が多くなるこのところです。そんなわけで好きなソフトボ−ルの練習もできず、体を動かしたくてもままならない、ここ数週間が続いています。
 
昨日も午後からの練習が雨でできないため、観念して石川遼くんの出るゴルフのテレビ観戦と決め込みました。見事な今シ−ズン初優勝を飾ったわけですが、テレビをつけ始めた頃はそれこそ、ハラハラ、ドキドキの展開で、いきなりこのテレビ放送に引きつけられたものです。
 
12番ホ−ルで左に2発、OBを打ち込んでしまい、結局このホ−ル9打打ってしまったのです。パ−4のところですから、何とこのホ−ルだけで5オ−バ−と、今までの貯金を全部吐き出してしまいました。
 
また後の優勝インタビュ−で知ったのですが、打ち直しの第5打目も同じく左で、危なかったみたいです。でもこの選手の凄いのは、OBを2発ぐらい打ったところで、全然へこまないことです。
 
こうした優勝に手の届く位置にいたりすると、選手によってはセコく、アイアンで刻んでいったり小さくまとまったゴルフをしがちです。ましてや2発も打ってしまうと、それまでの攻め方と変わるものです。
 
ところが遼くんは違います。本人が言っているとおり、毎ホ−ル全て、より遠くにそしてピンデッドに狙っていくゴルフを変えません。
 
ですから9打叩いた次の13番の攻め方が見ものだったのですが、池越えのグリ−ン、すぐ手前に立つピンを果敢に狙っていったのです。その前に打った韓国の金選手が池に入れただけに、安全に右側へという攻め方もあったのですが、全くそんなことは頭にありませんでした。
 
こうした強気で前向きな攻めが、16番のグリ−ンサイドからの直接カップインしたイ−グルにも繋がっていくのでしょう。転がり具合で少し強いと思ったのですが、ピンの真正面に当たり、そのままカップインしたのです。
 
まさに初優勝のときのバンカ−からのチップインと同じく、このミラクルイ−グルで優勝を決定的なものとしたのです。
 
以前読んだ五日市剛さんの本の中に、何か苦難に直面したとき、くよくよ考えるのではなく、そうした状況を与えていただいて「有難う」と言いなさい。また逆に良いことがあったり、好転したときは「感謝します」と言うように心がけよとの言葉がありました。
 
幸せとツキを呼ぶ魔法の言葉なのです。石川遼選手にもまさにピッタリ当てはまることで、OBを2つ出したことより、打ち直しの5打目がOBにならなかったことが、ファンの皆さんの後押しのお陰だと感謝しています。
 
やはりこの選手を眺めていると、なるべくしてなっているような、宿命的なものを感じます。世界に通用するためには、今のようなどんどん攻めていくゴルフを、もっともっと極めていかなければなりません。
 
きっとそう遠くない将来、この選手ならやってくれるのではないでしょうか。初めて出場したマスタ−ズ同様、ゴルフの聖地、全英オ−プンでまた1つ逞しくなってくれることを願っています。


ETC特需の裏側で

[2009年06月26日(金曜日)|No.1649]

休日の高速道路が5割引で最高でも1000円という、休日特別割引が実施されてから、一層ETC車載器の特需が止まらないというか、供給不足が解消されないとのことです。
 
県内のカ−用品店ではこの制度が始まった3月以降、慢性的な品薄状態が続いていて、8月のお盆休みも休日扱いを検討するといった政府発表もあったことから、この供給不足は当分解消される見込みがないようです。
 
3月を境にETC車載器が店頭から消えてしまった店もあり、地元沼津市のカ−用品店の中には5月以降、予約の受付も中止しているところもあるそうです。
 
メ−カ−からは予約の1割程度の台数しか割り当てられないとのことで、3月予約のお客にも迷惑を掛けているような状態で、今予約を受けても年内は無理とも伝えられています。
 
聞くところによると、どうやらこの原因(遠因)は民主党にあるようです。まだ同党のマニュフェストが正式に出ているのかどうかは知りませんが、以前この党が政権の座に就いたら、確か高速道路を無料にするという公約を掲げていました。
 
俄然、混迷する政界はここにきて解散が現実的なものとなってきました。また麻生首相の支持率はさらに急落し、半分死にかかったような政権です。そんなことから東国原県知事が自民党を大きく変えるために、総裁うんぬん等の話まで出てくる始末です。
 
ですから、ここで民主党政権の実現は決して夢物語でもないわけです。従ってもし同党の政権となったら、大見得を切った以上、言葉どおり高速道路は無料になるかもしれません。
 
それゆえ無料になったらETCすら必要でなくなるわけです。こんなことから、一説にはこの特需だというのに、メ−カ−が生産ラインの増設を全然考えていないから、遅れを招いているのだと言われるのです。
 
なるほどと思わせられる事実です。無理に増産しても、ある時期から不要となってしまったら、大きな在庫損失をも招きかねません。この作るか否かの判断が非常に難しい状況にあるのです。
 
こんなわけで、一向に注文の渋滞が解消されないという説もうなづけることです。それにしても無料になったらどうなるのでしょうか。一般道に比べ、少しでも目的地に到達できるのが高速道路というものではないでしょうか。
 
それが5月の連休のように”拘束”道路になってしまっては全くその機能を果たせません。私はそんなわけで、無理に無料にしなくてもよいように思うのですが...


ちょっと良い話part48

[2009年06月25日(木曜日)|No.1648]

ほんものはつづく、つづけるとほんものになる」という本の中に載っていたちょっと良い話です。こうした先生ばかりなら、子どもたちはきっと救われることでしょう。
 
広島県のある高等学校の話です。水泳大会のプログラムの中に、学級対抗のリレ−が組まれました。
 
ある学級で、4人の選手の中、3人はすぐ決まりましたが、4人目でもめました。その時、いじめグル−プの番長が「Aに出てもらおう」と叫びました。「そうだ、そうだ、Aがいい」と取り巻き連中が賛成してしまいました。
 
Aさんは小児麻痺の女生徒で、とても泳げる体ではなかったのです。でも彼らの恐ろしさを知っているみんなは、それに抗議することができませんでした。
 
いよいよ大会の日、Aさんが泳ぐ番になりました。1m進むのに2分もかかりました。まわり中からバカにした笑いと、ののしりの声が浴びせかけられました。
 
その時、背広のままプ−ルに飛び込んだ人がありました。そして「つらいだろうが頑張っておくれ。つらいだろうが、頑張っておくれ」と、泣きながら一緒に進み始めました。校長先生でした。
 
冷たい笑いとののしり声がピタリとやんで、涙の声援に変わりました。Aさんが長い時間をかけて25mを泳ぎぬき、プ−ルサイドに上がったとき、先生も、生徒も、いじめグル−プのみんなも、一人残らず立ち上がって、涙の拍手を送りAさんをたたえました。
 
その学校のいじめは、そのときからピタリと姿を消しました。校長先生がAさんの輝きを、みんなに気づかせ、目覚めさせてくださったのです。

 
分別臭くなった今だからこそ、相手のことを考えれば、こうした嘲笑や冷やかしはとても馬鹿げたことだと理解できるものですが、血気盛んな時代はなかなか気づかないかもしれません。
 
こう言う私も当時を振り返れば、決してその例外ではありません。それだけに人間として最低で愚劣な行為だと、早く気づかせてあげる指導者の存在が必要です。
 
まさに我が身をもって気づかせてあげた、この校長先生のような指導者との出会いがあった人は幸いです。やはり素敵な出会いが、その人の人生を大きく左右するものだと思っています。


セブンイレブンの良識を問う

[2009年06月24日(水曜日)|No.1647]

大手コンビニチェ−ン・セブンイレブンに、フランチャイズ(FC)の弁当などの見切り販売に対し、値引き制限をしたとして、公正取引委員会から排除措置命令が出ました。
 
確か2月頃だったでしょうか、過日この欄でも同社にその調査が入ったとのことで触れました。その間、公取委とのやりとりがいろいろあったのでしょうが、一向に進まない業務改善に、とうとうしびれを切らしたような形で命令が出たわけです。
 
とにかく、もったいないこと、おびただしいものです。通常、このFCでは消費期限の2時間前になると商品の陳列ケ−スから取り除き、やがては全て廃棄処分となるわけです。
 
しかもこの廃棄処分した品、原価分が全てがFC側の負担となるのです。2007年に約1100店舗で1年間調査したところ、この額は1店舗当たり年間530万円にも上ると言われるから、馬鹿に出来ないものです。
 
ですからFCにしたって、むざむざ一銭も取れず廃棄処分となる品物を、少しでも安くして消費者に買ってもらいたいと思うのは自明の理というものです。またそれを望む消費者も少なくないものと思われます。
 
しかし、この加盟店舗は国内で約12000店あるとのことですが、値下げに踏み切っているのはわずか数十店に過ぎません。ある一部のお店では夫婦二人で頑張っても月収は30〜40万円にすぎないが、見切り販売を始めてから20万円増えたとのことです。
 
こうした各店の赤字解消にはとても良い方法だと思われるのですが、それが本部の意向で許されないのです。そんなことをすると、二度とするなと脅したり、契約の打ち切りを示唆するというのです。これではセブンイレブン側は否定していますが、取引上の優位性を乱用していると言われても仕方のないところです。
 
セブンイレブン側はこの命令を受け、真摯に受け止めるとしながらも、見切り販売は一部のFCの意向に過ぎず、多くの加盟店は反対しているとのコメントを出し、今後の対応をじっくり協議するとし、今すぐ改めるとは表明していません。
 
こうしたコンビニの見切り販売はス−パ−等の価格競争に巻き込まれるとして、中長期的には加盟店の利益にはならないという、コンビニのス−パ−等とのビジネスモデルの違いを強調しているのです。
 
ですが、毎日毎日捨てられている食材は半端なものではありません。それが食料自給率が低く、我が国だけでは生きていけない日本の、しかも優良企業とも言われるセブンイレブン・ジャパンの為すことでしょうか。
 
もちろん残さず商品を売り切るという努力は加盟店に求められることになりますが、残ってしまったものをただ捨てればよいといった考えには繋がりません。昔から年寄りに食べ物を粗末にしたら目が潰れると言われ続けてきました。
 
それだけに、こんな”もったいないこと”をし続けていたら、そのはね返りが怖いものです。世界で飢餓に苦しむ人が8億もいるという中、我が国だけが大切な食材を粗末にしていることなど、到底許されるものではありません。
 
会社の存在や存続は単なる利益の追求ではなく、存在することにより何らかの社会貢献やお役立ちを世に図ることです。ある意味では日本を代表する会社ゆえに、単なる自社の都合だけではなく、社会への使命を考えなければなりません。それゆえ、許せない無駄を省くためにも、同社の良識を問いたいものです。


若者撃退対策

[2009年06月23日(火曜日)|No.1646]

公園で夜たむろして騒いだり、設備を壊して迷惑を掛けている若者を追い出すために、「キ−ン」という音を出す不快な高周波音を出す装置を、東京足立区で設置したとの記事がありました。
 
暑くなっていくこれからのシ−ズンは特にこうした輩の出没しやすい時期でもあります。この装置の設置は今までコンビニでの使用例があるが、自治体では初めてとも言われています。
 
装置は英国製で、若者だけに聞こえる音の帯域をうまく利用しているとのことです。この高周波音は17.6KHZで、モスキ−ト音とも呼ばれ、大きさは90〜100デシベル、年齢を重ねるごとに聞こえにくくなりますが、20代前半ぐらいの若者には20〜30m離れていても、耳障りな音として聞こえると言います。
 
またこの耳障りな音を毎日夜11時から午前4時まで、1分間隔で3分間鳴らしているそうです。この結果、当初は見物客が集まり、少し別の騒ぎになりましたが、現在では被害が確認されていないとのことです。
 
それまではこの公園では深夜、中高校生らが大声で騒いだり、防犯カメラも壊されたりして、被害金額も馬鹿にならず、近所の住民からはうるさくて眠れないとの苦情が続出していて、夜間パトロールも抑止効果も上がらなかったと言います。
 
こんなことでもしなければ追い払えないとは、本当に困った世の中になったものです。そうした若者の存在は言語道断のことですが、一方ではいったい、その親たちは自身の子をどのように管理しているのでしょうか。
 
夜、のこのこと出掛けさせるのや、外出したまま戻らないのを気に掛けないのは大きな問題でもあり、親としての怠慢です。やはり子どもばかりに原因があるわけではないと思われます。
 
それにしても、こうした対策に全国の自治体から問い合わせが来ていると言いますが、効果があると言って安易にただ設置するのも考えものです。それよりも、もっと根っこの部分を見つめ直すことの方が、より大切なことと思うのですが...
 
蛇足ながら当方、過日の人間ドックで聴力に少し異常ありと引っ掛かりました。口の悪い友達いわく、「それなら長生きするよ。何より人からの悪口が聞こえなくて済むから」とのことです。あんまり聞こえすぎるのも善し悪しですね。


好調ヤクルト

[2009年06月22日(月曜日)|No.1645]

我が密かに応援している東京・ヤクルトスワロ−ズが好調です。ここで3連続サヨナラ勝ちで7連勝ですか、そして昨日で終えた交流戦でも、いつの間にか2位の成績を残していました。
 
やはり隠れヤクルトの身としても嬉しいものです。依然、圧倒的な強さで走り続けている、宿敵・ジャイアンツを追走できるのは、ここまできたら、もうヤクルトしかいないかもしれません。
 
それにしてもジャイアンツは強いですね。過日、この欄でも書きましたが、WBCの優勝投手、岩隈、ダルビッシュ両投手をもってしても歯が立ちませんでした。唯一、封じ込めたのは杉内投手ぐらいだったでしょうか。
 
ですから好調ヤクルトでも、突っ走る巨人には歯が立たず、この先独走を許してしまうかもしれません。と言うのは何しろ対戦成績が悪いからです。どうも昔から苦手意識が強いのか、結構いい試合をしていても、もつれて最後には負けてしまうゲ−ムが多いのです。
 
こうした実力いまいちの愛すべきヤクルトですが、好調の原因を探ると、主砲・ガイエル選手の活躍が光ります。先に日本新、いや世界新とも言われた11打数連続安打記録達成のときでも、タイ記録の10本目はガイエル選手の満塁ホ−ムランです。
 
このように見事な活躍をしている同選手ですが、昨年の契約更改時には半分戦力外のような存在だったようです。しかし新加入のデントナ選手が一人では初来日でいろいろと不安だろうと、通訳代わりで残したようなもので、年俸もそれまでの1億2000万円から4400万円に大幅減となりました。
 
でも元々は真面目な同選手、投手不利の2ボ−ル(0−2)からでも変化球を投げてくるような、日本野球のアメリカとの違いを一生懸命、デントナ選手にも教え込んだようです。
 
ですから当初不振に喘いでいたデントナも、その結果がようやく出てきたみたいで、土曜日の西武戦でも、サヨナラの一打を含む、全打点の5点を一人で叩き出す見事な活躍でした。
 
ガイエルがデントナに一生懸命伝えていることが実ってきたのでしょう。やはり、人に教えることは自分をも振り返ることになり、良い効果をもたらすことに繋がるのでしょう。
 
またヤクルト球団からすれば首にしたゴンザレスが巨人であれだけ活躍していることもあり、ガイエル選手まで切らなくてよかったとつくづく思っていることと思われます。
 
是非、好調ヤクルト、息切れせず最後まで突っ走ってもらいたいものです。それにしてもヤクルトは今尚自責点0の抑えの林昌勇(イム・チャンヨン)投手など、獲得する外人の力を見抜くのが優れている球団です。
 
どこかの球団みたいに、ここで活躍した外人をそっくり金の力で引っこ抜いていく真似が繰り返されないよう、くれぐれも努めてもらいたいと願っています。


半落ち

[2009年06月19日(金曜日)|No.1644]

久しぶりに本を読んで感動しました。なかなか読む機会の少ない私ですが、会の用事で静岡まで電車で出かけるときなど、ときどきは目にしています。
 
先日もこの片道約1時間の電車が退屈なので、家内から借りていった本の「半落ち」という、比較的読みやすい本(推理小説風の警察小説)を読み出しました。
 
とにかく、そのあらすじの展開に思わず読みふけったものです。主人公・梶聡一郎は元捜査一課の警部で警察学校の教官を務める、周囲からも慕われた実直な人間なのですが、ある日、アルツハイマ−の妻を殺します。
 
二人には13歳の一人息子がいたのですが、急性骨髄性白血病で7年前に亡くしています。そしてその命日、昼間に二人でお墓参りにも行ったのにもかかわらず、夜になって命日も忘れていたと言って騒ぐ、この妻が息子の記憶が自分の中にあるうちに死にたいと懇願します。
 
こうしたアルツハイマ−に悩む妻に乞われて、やむなくその首を絞めて殺すのですが、それから3日経ってからやっと警察に自首するのです。警察では元同僚である、この梶の人間性から2日間の行動に、なぜ自殺を選ばなかったのか、また捜査の過程で出てきた、新宿・歌舞伎町に出掛けた痕跡に深く疑問を持ち始めるのですが、本人は断固として黙して語りません。
 
しかし歌舞伎町というイメ−ジだけで、マスコミに騒がれたくなく、警察の体面を守りたい上層部と、2日間の空白の真相を解き明かしたい担当刑事の葛藤が続くわけですが、最後は警察権力と梶元警部の澄んだ瞳に影響されてか、担当も引き下がり、偽装の供述調書を作り上げます。
 
そしてこの物語が面白いのは全編が6つの章に分かれていて、それぞれの章が担当の刑事・検察官・新聞社ジャ−ナリスト・弁護士・判事・刑務官(刑務所)で構成され、引き継がれていくのです。
 
そのそれぞれが、この梶元警部の真相を暴きたいのですが、結局は彼の人間性から、本人を強く傷つけたくないことより、そのまま差し障りなく引き継いでしまい、結局は2日間の真相が解明されないまま、刑務についてしまうことになるわけです。
 
そして最後に感動的なクライマックスが控えているのです。これから読んでみたい人のためにも、敢えてエンディングには触れませんが、生きている証しを見事に描いています。
 
昨日も臓器移植法改正案が衆議院で可決されたようですが、いろいろと立場立場で難しい問題が潜んでいるようです。この物語も、骨髄移植というドナ−の提供者さえあれば息子は死なずにすんだという、父親の虚しい気持ちから、命の絆を見つめ直しています。
 
数年前、映画でも既に封切られているそうですが、一読に値するかもしれません。スト−リ−がただ面白半分な展開だけでなく、作者の主張めいたものが最後に感じられ、爽やかな読後感を持ったものです。


五十肩

[2009年06月18日(木曜日)|No.1643]

五十肩ってよく言われていますが、こういう症状になったことはありますでしょうか。私は幸いにもまだ一度もありませんが、よく周囲で聞かれることです。
 
上着の袖に手を通そうにも肩が痛くて上がらないとか、夜寝ているときにも右半身を下にすると痛くて眠れないといった症状です。そして病院で検査しても、さして目ぼしい異常がないのに、強い痛みだけを伴う、やっかいなものです。
 
医師からは典型的な五十肩ですねと言われ、痛み止めと湿布薬を処方されるだけで、これといった手当ても受けません。
 
聞くとこの五十肩というものは江戸時代からあったそうです。五十腕とも呼ばれ、当時は平均寿命が50歳以下だったことから、長生きの証拠として長命病とも呼ばれていたとのことです。
 
こうして古くから人々を悩ませてきた痛みですが、実態はよく分かっていないそうです。肩関節の動きが制限される痛みであることには違いありませんが、どうして起こるのかとか、ほっといても日が経てば自然に回復することなどは、未だに解明されていません。
 
でもこの症状が多く見られる人の中には、糖尿病や高脂血症の人も少なくなく、抹消血管に障害のあることも関連があるのではないかとも言われています。ですから成人病とも満更、無縁ではなさそうです。
 
それではこういった症状が出始めたらどうしたらよいのかと言うと、痛みが少しやわらいだら動かせる範囲で少しずつ肩を動かした方が回復は早いそうです。でも逆にひどい場合は動かさない方がよく、重い荷物を持つなど、肩に負担を掛けるのは厳禁とのことです。
 
先に記したとおり、ほうっておいても筋の断裂などがない限り、1〜2年で完治するとのことなので、比較的、安易に考えがちな症状かもしれませんが、成人病などの予知といった観点で少し目安にした方がよいかもしれません。 
 
先日も山登りに連れていってくれた友人が、肩がここまでしか上がらないと言って、たいそう痛そうでしたが、そうした痛みは経験した人でなければ分からないものです。
 
幸いにもまだ一度も味わっていない当方にとっても、いつやってくるか分からないものですから、安心ばかりはしていられません。もっとも五十ではなく、六十肩というものはそもそも存在しないかもしれません。
 
そうしてみると、「いい年をしてよくやるよ」と周囲から冷かされている、好きなソフトボ−ルもそれなりの効果があるかもしれません。若いときに比べ、半分も投げられなくなった肩や、おぼつかなくなった動体視力に鞭打ってでも、何とか70までできたらよいかなと思っているしだいです。


社長兼プロレスラ−の死

[2009年06月17日(水曜日)|No.1642]

プロレス・ノアの社長、三沢光晴さんが亡くなられました。13日の試合中に頭を強打したことが直接の原因とのことですが、46歳とまだまだ若く、馬場、猪木両氏の抜けた後、日本プロレス界を背負っていた一人だけに、その死は各方面から惜しまれています。
 
私はあまりプロレスを観ないので、三沢さんの華々しい姿はよく知らないのですが、野球で言うところのプレ−イングマネジャ−で、社長兼看板プロレスラ−という立場は、結構重荷であったようです。
 
特に今年の3月に、日本テレビの地上波中継を打ち切られてからは、金策に悩むことも多く、私たち中小企業のオヤジと同じ悩みを抱えていたとのことです。
 
また常に全力プレ−をモット−として、抱えている選手全員にも日頃から呼びかけ、率先垂範で動いていたこともあって、自身の体は満身創痍とも言える状態でしたが、泣き言は一切洩らさなかったと言います。
 
ですから首にも爆弾を抱えていて、事故の起こった試合前にも肩がきついと洩らしていたようです。それでも看板レスラ−の宿命で、勝手に欠場するわけにはいきません。まさにこうした状態は何があっても抜けられない中小企業のオヤジそのものですね。
 
こうした満身創痍の体にもかかわらず、強行出場していた無理な体への負担や、会社経営の心労が結果的には命を縮めてしまったことになるわけです。
 
一説には今年限りで現役プロレスラ−を引退して、社長業一本に絞るとも伝えられていました。それだけに惜しまれることです。
 
昨日も、出入りの部品代理店の担当が我が社にやってきて、日頃その機器を使用している大手のK電機が会社更生法を申請したとのニュ−スを聞きました。まだまだ業界は厳しいようです。もちろん我が社もその例外ではありません。
 
しかし開き直るわけではありませんが、こうしたときだからこそ会社の仕組みを大きく見直すべきだと教えられています。会社改革を徹底的に進め、忙しいときには出来なかったことを整備し、本当にやるべきことをやり切れと言われています。
 
また今からやれば半年後にはきっと差がつくと言われます。三沢さんの死には心より哀悼の意を表したいと思いますが、他山の石とせぬよう、命あっての物種で、健康にも留意して努めなければと思っています。 


父の日に

[2009年06月16日(火曜日)|No.1641]

内輪の話で恐縮ですが、先週の1週間は、家内のご両親がはるばる小豆島から沼津にいらしていたことから、二人の娘も何日か家に戻ってきて、久しぶりに大勢で賑やかな食事を囲むことができました。やはり食事は大勢でいただいた方がずっとおいしいものです。
 
そんなわけで車でいらしていたこともあって、一昨日の日曜日、途中までお送りしようと大阪ぐらいまで、2台の車を連ねて出掛けました。これもETCの休日割引のお陰です。
 
また大阪に行ったついでに息子の元気な姿を見ようと、皆で立ち寄り、ご両親をお見送りした後、昼食をとって別れました。ですから大阪にいたのはほんの1時間ちょっとでしたが、少しでも元気な顔を眺めれば親は安心するものです。
 
彼をアパ−トまで送っての別れ際、「お父さん、これプレゼント」と言って、綺麗に包装した包みを私に渡すのです。一瞬何のことか、よく判らなかったのですが、今度の日曜日が父の日であることを知らされて、ようやくその意味が解りました。
 
私もそうだったのですが、女の子と違い、男はこうして渡すのが結構照れ臭いものです。それゆえ別れ際まで黙っていたのでしょう。彼と別れてからすぐ娘と家内に催促され、包みをほどいて中を開けてみました。
 
マンシングの素敵な白いポロシャツが入っていました。見てすぐ気に入ったわけですが、その脇に手紙が添えられていました。
 
お父さん  いつもお疲れ様  いつもありがとう  
 
体に気をつけて  いつまでも若くいて下さい
 
またゴルフ連れてって  夏に帰りま−す

 
という短い内容でしたが、読んだ途端、もう駄目です。胸がいっぱいになってしまいました。やはり老化現象も手伝うのか、ついこの間までまだ少年の面影が強かった、我が息子がこんなにも成長しているのかと知らされ、思わずグッと来たものです。
 
この秋にはドイツへの留学を控えている彼です。そうした大学生活を存分に満喫しているのでしょう。自分には適わなかった、彼なりの大きな夢を是非実現させてやりたいと、改めて心から思ったほどです。
 
それにしてもETC休日割引の特典はすごいものですね。沼津から大阪の枚方東まで、大都市近郊区間を含むといっても、たったの1900円です。私も初めてその恩恵を受けたわけですが、サ−ビスエリアの買い物でごった返している様子を眺めても、まだまだ日本は元気だなと、つくづく感じたものでした。


日本郵政社長問題

[2009年06月15日(月曜日)|No.1640]

千葉の市長に31歳の方が当選しました。全国最年少とのことですが、やはり私たち一般の人間は、このもやもやとした閉塞している空気を、大きく変えてもらいたいと望んでいるのではないでしょうか。
 
国の方では相変わらず、しまりのない抗争が続いています。その1つ、日本郵政の社長・西川さんの進退問題で、とうとう鳩山総務相が辞任、いや事実上の更迭となりました。
 
元々この問題は麻生さんの求心力不足が招いた問題です。鳩山総務相は「麻生は首相になれない。傷つくからやめろ」と周囲から言われ続けながら、麻生総理実現に力を注いだ、いわば盟友的存在でしたが、最後は切られるような形でこの辞任に追い込まれました。
 
麻生さん自身も西川社長のことをあまり好ましく思っていなかったようですが、裏側からこの西川社長の続投を推す、無視できない勢力があったようです。他でもない郵政民営化を実現した、小泉さんを中心としたグル-プです。
 
もし西川社長を切るようなことがあったら、このグル-プによる、小泉さんを中心とした新党結成の動きが加速しかねません。もし鳩山さんが今回のことで抜けるようなことがあっても、それよりもずっと少数にすぎないからと、迫り来る衆院選からの、党分裂の危機を考えての苦汁の選択だったという話です。
 
でも、元々こうした事態を招いたのは「私は元々郵政民営化には賛成でなかった」という自身の言葉であり、それから指導力を欠いていったのです。ですから自業自得と言っても仕方がないものでしょう。
 
でもこのゴタゴタの中で、私が1つだけ納得できないことが、日本郵政の社長・西川さんを辞任させることは、さも郵政民営化の動きを阻止するようなことだと、煽り立てていることです。
 
社長の辞任は、あの数千億の資産を持つかんぽの宿の不透明な売却などの責任にあるわけで、郵政民営化の流れを阻止するものとは関係ありません。
 
そもそも、全国70の施設や9棟の従業員宿舎にも及ぶ、数千億円の施設がいくら従業員雇用も併せてと言っても、たった109億円で売却されるという話もおかしなものです。
 
しかも売却先が、この民営化推進会議の議長を務めていた宮内さんが会長を務めるオリックスグル-プなのです。こんな不透明なことはありません。この問題すら、うやむやにして深く追求していないのが実情なのです。
 
まさに臭いものに蓋的な話です。一括売却でないと、人気のない赤字の大きい施設が取り残されてしまうなどと、言い逃れしていますが、民営化にするからこそ、そうした採算のとれないものを見直し、整理できるのではないでしょうか。
 
とにかく、政治家の言動はよく解りません。パフォ−マンスが過ぎる鳩山さんも決して支持できるものではありませんが、それよりも陰でドヨドヨとうごめく不可解な流れは、断じて見過ごすわけにはいきません。


おやじの弁当

[2009年06月12日(金曜日)|No.1639]

昨日に引き続き、また違った弁当の話です。アサヒビ−ル顧問の中條高徳さんが、雑誌「致知」に書いてあった一文をちょっとご紹介したいと思います。
 
子は親の心を実演する名優である」と言われていますが、それを見事に実演した、本当の話です。
 
故・樋口清之教授(国学院大学)の書かれた随筆が戦前の家庭の姿、親子の生き様を語って余すところがない。
 
樋口さんの友人で、よく貧乏に耐えて勉学にひたむきに努める人がいた。その友人が勉学に励んだ動機は、「おやじの弁当」だという。
 
彼はある日、母の作る父の弁当を間違えて持って行ってしまった。彼曰く「おやじの弁当は軽く、俺の弁当は重かった。おやじの弁当箱はご飯が半分で、自分のにはいっぱい入っており、おやじの弁当のおかずは味噌がご飯の上に載せてあっただけなのに、自分のにはメザシが入っていたことを、間違えて初めて知った。
 
父子の弁当の内容を一番よく知っている両親は一切黙して語らず。肉体労働をしている親が子どもの分量の半分で、おかずのない弁当を持ってゆく。これを知った瞬間、『子を思う親の真(愛)情』が分かり、胸つまり、涙あふれ、その弁当すら食べられなかった。
 
その感動の涙が勉学の決意になり、涙しながら両親の期待を裏切るまいと心に誓った」という。
 
それに引き換え、戦後の私権の主張のみに急な世相の中では、「お父さんの弁当の中身は少ないが、お前のはちゃんとした弁当だから頑張れ」などと発言しがちであるが、それでは「恩、愛の押し売りはごめんだ」と生意気な子どもの言葉がはね返ってくるのがオチであろう。
 
この「おやじの弁当」の心こそ、仏道で説く「陰徳」の妙法であり、「慎独」の実践なのである。

 
辞書で調べましたら、陰徳は人知れず施す善行・めぐみとのことでした。昔と現代の日本文化の大きな違いは、この「さりげなさ」にあるように思えます。私も例外ではなく、依然として、主張ばかりが目立つタイプから抜けきることができませんが、いつの日か、こうありたいものです。
 
また本当の人間の価値というものは、華々しい表の部分よりは、むしろ人知れず積み重ねている陰の部分にあると言ってもよいのではないでしょうか。
 


ちょっと良い話part47

[2009年06月11日(木曜日)|No.1638]

「ほんものはつづく、つづけるとほんものになる」と先日紹介した、東井義雄先生の「修学旅行のおむすび弁当」という、ちょっと良い話です。
 
春の遠足に付き添って行かれた東井先生は、子どもたちが開いた弁当を見て、悲しくなりました。大勢の子が町のお寿司屋さんの巻きずしを持ってきているのです。
 
毎日、学校の給食を食べている子どもたちです。遠足の弁当ぐらい、どんなに忙しくても、めんどうでも、お母さんが心を込めて作ってやってもらえないだろうか、と思われたのでした。
 
間もなく行われる6年生の修学旅行では、「1食は弁当持参」という計画になっていることを知って、お母さんたちにお願いをされます。
 
「今度の修学旅行で、1食は持参となっている弁当は、何とか巻きずしはやめにして、お母さんたちが心を込めて、しっかり握ったおにぎりを持たせていただけませんか。そしてそのおにぎりを、どんな思いを込めて握ったのか、手紙をつけていただけませんか」
 
さて、修学旅行最初の日のお弁当の時間です。子どもたちが弁当の包みを開いてみると、みんな大きなおにぎりです。お母さんの手紙がついています。
 
感激のあまり、その手紙を持って踊り回っている子がいます。ふだんはやんちゃをやって仕方のない男の子が、お母さんの手紙を涙をにじませながらジ−ッと読んでいます。
 
読み終わると、その手紙を丁寧に折りたたんで、お守りのように大切そうに胸のポケットにしまいました。後で提出された旅行記を読んでみると、子どもたちがどんな思いで、お母さんの手紙を読んだかがよく分かりました。
 
「お母ちゃん、無事に奈良に着いたで安心しておくれ。今、旅館の寝床の中で、お母ちゃんの手紙を読み返しとるとこや。明日も気をつけて頑張るから安心しておくれ。おやすみ」
 
「お母さんの手紙を読んでみると、このおにぎりの1つ1つを、どんな思いを込めて作ってくださったのか、よく分かる。気がついてみると、私の着ているこの服にも、飾りについている刺繍にも、一針一針にお母さんの心がこもっているのだ。私もお母さんのようなお母さんになりたい」

 
東井先生はこのような「命と命の出会いから、教育も幸せも始まるのだ」と書いています。ちょっとした手間暇を惜しんでいては、折角の愛情が伝わりません。ゆとりをいまいち感ずることのできない現代、ただ毎日を流されることなく、しっかりと本質を見つめていたいものです。


ハンデをハンデとしない生き方

[2009年06月10日(水曜日)|No.1637]

何とも凄い話です。アメリカのテキサス州で行われたバン・クライバーン国際ピアノコンクールで、全盲の日本人ピアニスト・辻井伸行さん(20歳)が見事、優勝を果たしました。
 
同コンクールは、ピアノコンクールとしてはチャイコフスキー国際コンクール、ショパン国際ピアノコンクールなどと並ぶ超難関とも言われています。
 
でも決して目の不自由さを克服して、高度な技術を会得したからと言って評価されたわけではなく、他の出場者と全く同じ条件で出場して、卓越した演奏力により文句なく栄冠に輝いたのです。
 
何しろ生まれつき目が見えないわけですから、音符だって追っかけるわけにはいきません。また点字をなぞっていても時間が掛かります。こうして師事した先生から、何よりも音そのものを何回も繰り返し、聴かせてもらって憶えていったと言われます。
 
ですから目のハンデが、ある意味では先天的な耳の感性を研ぎ澄ませることになり、天才的な音感を生み出したのかもしれません。4歳から本格的に習い始め、10歳ではもうオーケストラと初共演してプロデビューするくらいの腕前の持ち主なのです。
 
このコンク−ルでの演奏模様をテレビで少し眺めましたが、何と表現したらよいのでしょうか、ピアノを弾いているというよりは、鍵盤の上を指が勝手に踊っていると言った方がよいかもしれません。
 
とにかく見事なものです。それにしてもここまで育て上げたご両親の苦労は計り知れないものがあるものと思われます。
 
目の見えない辻井さんに対し、母のいつ子さんは「りんごは赤、バナナは黄色」と教えると「じゃあ、今日の風の色は何色?」と聞いたとも言われます。何よりも感性を大事に育みたかったのでしょう。
 
また医師である父親の、「幸せな人生が歩めるか、つねに不安を感じてきた息子だったが、優勝の瞬間は、『生まれてきて、よかった』と感じてくれたでしょう。お世話になった方や、伸行の目となり、手足となり、付き添ってくれた妻に感謝したい」という言葉に全てが表れているものと思われます。
 
また、「これで、息子もめしがたべられるようになればよいのですが」という言葉も述べられていたそうですが、子を想う親の偽らざる心境ではないでしょうか。
 
「努力に勝るものはなし」と言われていますが、それに辻井さんの場合は天性の音感が備わって磐石となりました。私などは五体満足に生まれ育っていながら、無芸大食のこの身を恥じなければなりません。そんな凡人とはとても比になりませんが、生まれながらのハンデを全然ハンデとせず、強く生き抜いている姿は眩しいくらい輝いて見えるものです。


とても割り切れない犯罪

[2009年06月08日(月曜日)|No.1636]

ちょうど1年前の6月8日、秋葉原での無差別殺傷事件が起こりました。26歳の派遣社員が歩行者天国で賑わう秋葉原の街中に小型トラックで突っ込み、3名が死亡、しかもトラックを降りた後、通行人を次々と切りつけ、さらに4名が死亡、併せて死者7名、負傷者10名という、白昼の大惨事となってしまいました。
 
今思い出してみても、身の毛がよだつような恐ろしい事件でした。これに先駆け、3月に起こった茨城県土浦市のJR荒川沖駅周辺で、通行人ら8人が殺傷された事件(茨城連続殺傷事件)が、少なからぬ秋葉原事件に影響をもたらしたようです。
 
この茨城連続殺傷事件の公判が先日開かれ、25歳の被告に対しの質問やその陳述内容がネットに公開されましたので、ちょっと眺めてみました。
 
とにかくその内容には慄然とさせられました。一口に言って、もう人間ではないのです。被害者への思いを尋ねられても、以下に記した言葉のとおりです。少しそのやりとりを紹介します。
 
弁護人「あなたは良いことと、悪いことは区別できますか?」
 
被告「常識に照らせば」
 
弁護人「殺すことは悪いことですか」
 
被告「常識的に考えて、悪いことです」
 
弁護人「常識を取り外せばどうなるのか」
 
被告「善悪自体存在しません」
 
弁護人「人を殺すことはどういうことだと考えていますか?」
 
被告「蚊を殺すことと同じことです」
 
弁護人「殺された人の周りの人。家族とか友人はどう考えるかな」
 
被告「まあ悲しくなるでしょう」
 
弁護人「それは理解できるの?」
 
被告「常識を考えれば」
 
弁護人「あなたは常識とさっきから話しているが、常識を取っ払えば、罪の意識とかは感じるの」
 
被告「感じません。ライオンがシマウマを食べるとき、シマウマに悪いと感じるのでしょうか」

 
ざっとこんな通りです。被害者の遺族にしてみれば、とてもいたたまらない気持ちになることでしょう。
 
この被告の実の父親でさえ、法定で実の息子を被告人と呼び、「大変、申し訳ないことをしてしまいました。お詫(わ)びしても、お詫びしても、お詫びしきれないが、お詫びしたい」と、遺族に深々と頭を下げていたそうです。
 
しかしながら、息子には目も合わせなかったほどで、当然死刑でしかるべきだと述べたとも言われています。
 
実の親子であって、こんなやりとりが果たして、まともと言えるものでしょうか。また本人は「死にたいことが先、そのための手段が殺人」と、死刑を望むために犯したことと述べています。
 
自分が勝手に死ねばよいのに、尊い他人の命まで巻き添えにするなって、腹立たしさが通り過ぎてしまうほどの怒りを覚えます。しかし法定のモニタ−で被害者の傷口などの映像が映し出されると、気を失ったとも伝えられています。
 
所詮は意気地のない、弱い人間なのです。それにしても、いくら死刑になるとは言え、被害者のご遺族同様に、何とも理解しがたく、とても気持ちは割り切れないものです。
 
明日は一日会社を留守にするため、カキコミは休ませていただきます。


ほんものはつづく

[2009年06月05日(金曜日)|No.1635]

ちょっと話が古くなってしまいましたが、去る5月9日、森光子さんの放浪記公演が輝かしい2000回を達成しました。しかも89歳の誕生日での偉業達成ということで、本当に見事なものです。
 
まさに東井義雄さんという方が言われる、「ほんものはつづく、つづけるとほんものになる」という言葉どおりのものです。
 
この放浪記という公演、何と3時間45分の大作とのことです。その上、主役は楽屋に戻る時間もないほど忙しく、終演で幕が下りると、もう立つことすらできず、歩けなくなるほどの状態だと言われています。
 
それくらい全精力を傾けているものと思われますが、毎回同じセリフだというのに常に新しい発見があるそうです。森さんはこの公演に限らず、セリフを自分がいちいち書き出して憶えているそうですが、やはり人一倍大切にしているのでしょう。
 
ですが今では国民栄誉賞をも受賞する、押しも押されぬ大スタ−なのですが、ずいぶんと遅咲きなスタ−でもあるのです。
 
元々は歌手で芸能界にデビュ−し、その後役者に転身してからもずっと脇役で、やっと41歳になってこの放浪記で主役の座を掴んだのです。
 
それまでの長く辛い下積み生活の間には、2度の結婚も挟み、哀しい恋と別れも味わい、「あいつよりうまいはずだがなぜ売れぬ」と、恨めしく思っていた時代も少なくなかったようです。
 
こうして初めて掴んだ放浪記の第1回公演、幕をこじあけ、おそるおそる観客の入りを見たのがその始まりでした。ある意味では放浪記と森光子さんの人生が合わせ鏡となり、作者である林芙美子さんと森光子さんの人生が重なり始めたのかもしれません。
 
昨年以前は続けていた、劇中のでんぐり返しもここにきて辞めることになりました。89歳の年齢を考えての周囲の助言によるものですが、ご本人は本当に申し訳なく思っているとのことです。
 
それよりも続けていくことの大切さを選んだのでしょう。また終演後のカ−テンコ−ルにはいつも多くの時間を掛けるそうです。感謝の気持ちを込めて、お客様ひとり一人の幸せをただ祈っているからです。
 
また続けてきたのは自分のため、生きることは放浪記を演じることとも言われています。一度観ても何度も観に行きたくなるのは、森さんの命が燃え尽きるまで女の全てをかけるといった、情熱と執念のお陰でしょう。ホンモノを是非一度観たくなりました。


ちょっと良い話part46

[2009年06月04日(木曜日)|No.1634]

久しぶりにちょっと良い話を紹介させていただきます。と言っても、この話は多くの方がご存知のことで、最後の部分だけ私もそうでしたが、意外と知られていません。
 
岩手県立大学長を務められた西澤潤一先生の講演内容から引用させていただきました。
 
日吉丸が草履取りをやった。彼は草履取りとして一番になろうと思って努力を続けるわけです。寒い日に織田信長が草履に足をおろしたときに、草履が冷たくなっていたら申し訳ないということで、日吉丸は懐に信長の草履を入れて温めていた。
 
足音が聞こえたからそれを懐から引っ張り出して、敷石か何かの上に並べたわけです。信長のほうは足をおろしてみたら温かい。それで日吉丸のやつ、自分がいないときに草履の上に尻をついて休んでいたからじゃないかと思ったんです。
 
草履の温かさに気がつかない人もいますけれど、やはり気がつくところは織田信長ですが、その後の解釈は必ずしも妥当ではなかった。
 
信長が怒って「この猿め」というわけで、扇子か何かで額をたたくわけです。額の皮が割れて血が流れたという話が伝えられています。
 
しかし、そのときに日吉丸が怒ってしまうわけではなしに、そんなことにめげずに、やはり自分が草履取りとして一番になろうとそれ以後も続けたということが、やがて士分にまで取り立てられるようになりましたし、またその場その場でベストを尽くすという彼の努力が、その後の繁栄をもたらしたわけです。
 
そのうちに、自分には他の人が持っていない、いろいろな天分を生かしながら、彼は自分というものを築き上げていったのです。

 
どうでしょうか、私もそうですが、大概の人はその場で自己弁護の言い訳をして、きっと後が続かないものと思われます。言い訳するより、ずっとやり続けることのほうが大切なのですね。
 
一昨日に出掛けた東方寺の座禅でも、老師のピンチヒッタ−となったご住職がこう言われていました。「座禅をやって何も無我の境地にならなくてもよい。またちょっとやそっとの修行でなれるわけがない。それよりも呼吸をゆっくり整えることが大事です
 
また大概の失敗や、怒ったりする感情が激しいときは、自分自身の息が乱れていると指摘しています。絶えずゆっくりと息を整えて、落ち着いて事に処することが、全て善き結果をもたらすのではないでしょうか。


迷走ぶり

[2009年06月03日(水曜日)|No.1633]

とうとうGMが破綻してしまいました。今日のニュ−スではその主力製品である大型車・ハマ−を中国企業に売却したとの報道も伝わってきました。いよいよ世界の自動車産業を100年以上引っ張ってきたアメリカの終焉とも言える大きな転換期ですね。
 
一方我が国でも、相変わらず麻生自民党政権の迷走ぶりが目立ちます。昨日のニュ−スでは、次回の衆議院選挙から世襲制の廃止を打ち出していた当初の案を、ここで大きく覆し、次々回からの実施としたようです。
 
元々民主党に対抗して打ち出したものですが、新人のみ対象とし、現職議員は対象外としていることで、かえって有権者の反発を招きかねないと危惧したからだと言われています。
 
でも毎日新聞の調査によると、前回の衆院選では、国会議員の現職や元職を父母や祖父母に持つ、この世襲候補者と呼ばれる人たちが166人もいて、そのうち133人が当選していると言うのです。
 
俗に言われていることに、政治家には3つのバンと呼ばれる「地盤(後援会)」「看板(知名度)」「かばん(資金力)」ものを持たなければなれないとあります。
 
これを本人のさして苦労や努力のないまま、引き継ぐことができるのが世襲候補です。中には本人にやる気のないまま周囲に押されてなるという人もいないわけではありません。
 
小学生新聞にも書いてありました。「国民のために仕事をするのが国会議員、その家や後援会のために仕事をするわけではありません。いわば家業ではない」と。小学生ですら分かりきったことなのです。
 
現在衆参両院で、この世襲議員という人たちは自民党が3割、民主党で1割占めているそうです。また自民党をぶっ壊すと言った小泉さんでさえ、何の抵抗もなく息子をその後継としているのが日本の現状なのです。
 
これでは如何せん日本の政治を大きく変えることはできないとも言えることなのです。
 
これで次期衆院選から、3親等以内の親族の同一選挙区からの立候補禁止との方針を、既に取り決めている民主党との違いがはっきり出てきました。
 
世襲問題だけではなく、厚生労働省を分割すると言ったと思ったらすぐ引っ込めてしまうような、何を考えているのかよく分からない政権にはこの国の将来を安心して託せません。
 
我が国もGMのような悲劇的な末期を遂げないためにも、一度大きく政治そのものを変えなければいけない時がきているように思っています。


秋元順子さんコンサ−ト

[2009年06月02日(火曜日)|No.1632]

家内と一緒に秋元順子さんのコンサ-トに行ってまいりました。ご存知、「愛のままで」が大ヒットで、オリコンランキングの最年長首位という輝かしい記録を打ち立てた方です。
 
以前にもこの欄で採り上げたことがありますが、61歳7ヶ月という最年長記録達成でしたが、本格的なプロ歌手デビュ-も58歳と、遅咲きの人です。
 
コンサ-トではその歌声に何よりも魅了させられました。声量はもちろんのこと、乾いた心に深くしっとりと沁みこむような、何とも言えないまろやかな歌声です。
 
それと、あまり女性の歳のことばかり言って恐縮ですが、もうすぐ62歳になるというのにエネルギッシュなところがいいですね。いわば同世代とも言えるわけですが、この人がこんなに頑張っているからにはと、こちらまで尻を叩かれているようです。
 
またおよそ2時間あまりのコンサ−トの中、「ありがとうございます」という言葉を何回聞いたでしょうか。数え切れないほど、私たちの耳に入ってきました。
 
やはり苦労人なのでしょう。58歳メジャ−デビュ-と言っても、子育てが終わっての40歳ぐらいのときから音楽活動を再開し、ご本人も言われていたとおり、それからが深く長く潜行していた時代が続いていたのでしょう。
 
それからご本人いわく、「ダジャレ−夫人」を自称しているがごとく、曲の合間にも次から次へとオヤジギャグというか、ダジャレが出てきて楽しくコンサ-トを盛り上げています。
 
また休憩なしと聞いていましたので、果たして大丈夫なのかなと思っていましたところ、「愛のままで」を作詩作曲した、花岡優平さんという方が少しの時間、繋いでくれました。
 
誰かと比べる幸せなんていらない   あなたの視線が愛しくあれば...
 
この「愛のままで」という曲も、もちろん素晴らしいのですが、花岡さんが1曲歌った「ヨコハマ」という曲がとても印象的で心に残りました。元々フォ-クグル-プで活動していた花岡さんでしたが、解散してから23年間、この作家活動に専念してきたそうです。
 
そして秋元順子さんとの運命的な出会いにより、大ヒットに結びつくのですが、「夢を諦めないでよかった」と言う彼女の言葉を聞く度に、封印したはずの歌手としての感情が蘇ってきたそうです。
 
やはり夢を持ち続け、諦めてはいけませんね。秋元順子さんが歌ったのは実に15曲以上にも及んだものでしたが、その多くは聴くのが初めてという曲でしたが、少しも苦にならなかったのはやはりその素晴らしい歌声のお陰でしょうか。久しぶりにプロの醍醐味を堪能できた夜でした。


法人会総会記念講演より

[2009年06月01日(月曜日)|No.1631]

先週の水曜日、沼津法人会総会があり、その記念講演として東海大学教授・葉千栄氏が講師として招かれました。葉教授はニュ−ス23や朝ズバなどのテレビ番組のゲスト出演も多く、日中関係や中国経済を鋭く分析するジャ−ナリストとして知られています。
 
中国は世界経済回復の牽引役になれるか」と題した講演の中で、冒頭まず日本のメディアの在り方に釘を刺しました。今の不況にしても悪い話ばかりメディアが煽っていると指摘しているのです。
 
まさに集団的ヒテリック現象で、自動車に代表される対外的な輸出不況などの問題を大きく取り上げるより、1400兆円の個人消費資産が眠る、7割の内需を問題にしないといけないと言われるのです。
 
景気が悪い、悪いと煽り立てることにより、消費者のマインドを一層閉ざすことになり、こうしたメディアにより作られたイメ−ジ先行を問題としているのです。
 
またちょうどこの日の朝、北朝鮮の核実験に対する制裁を安保理が全会一致で採択したのにもかかわらず、NHKでさえトップニュ-スで板橋の夫婦殺人事件を扱っている始末だと指摘し、この全会一致が歴史的出来事なのにと疑問を投げ掛けました。
 
姉歯問題に始まり、国交省たたきから生じた許認可申請問題のマンション・不動産業界不況、そして食品関連偽装問題へと拡大していった日本の不況も、このメディアの責任が少なくないとのことです。
 
そしてその他の講演内容はまた別の機会にも触れたいと思いますが、今、中国市場がアメリカに代わる大きな市場として、注目しなければいけないと言われているのです。
 
ここ4ヶ月、中国の自動車販売数は世界一を占めているそうです。5月中旬現在、月5万台以上売れていて、それも上海や蘇州などの沿岸都市部だけでなく、政府の優遇税制補助金により内陸部でも小型車が好調とのことです。
 
このようにその率は日本に比べ低いかもしれないが、何しろ13億人もの人口を抱える国、日本製品などを買える富裕層は9000万から1億人もいるというから数では決して劣るものではありません。
 
既に四川省などでは、イト−ヨ−カ堂やコマツ、資生堂などが今までのモノづくりではなく、大きな市場として注目し、進出展開を図っています。
 
イト−ヨ−カ堂ではス−パ−の売上を今までの3倍に伸ばし、政府の57兆内需拡大政策からの高速道路等の公共事業促進によりコマツでは建設機械が好調、そして資生堂では25000円もの化粧品セットが売れているそうです。
 
そしてそのチャンスはこうした大手だけではなく、私たち中小企業にも大いにあると指摘しているのです。展示会での日中双方によるビジネスマッチングやインタ−ネットの活用です。
 
とにかく今、通過の高いのは日本と中国だけ、アジアは世界最大のマ−ケットであり、その中でも中国はビッグ市場、いかに中国に国内マ-ケットを作るかが私たちに問われています。
 
何年か先、我が社も中国市場で電気による既存設備の改修や技術提案を描いていることから、その思いを一層強く持つことができた講演会でもありました。葉教授の言われるように、百年に一度の危機ではなく、好機として捉えなければいけません。