会長の”三行日記”

2012.11.16

森光子さん No.2314

女優の森光子さんが亡くなりました。享年92歳とのことですが、本当に惜しい人を亡くしたような気がします。今朝の天声人語にも書かれていましたが、文化勲章も受けたし、国民栄誉賞にも輝きましたが、何といっても「時間ですよ」の松の湯のおかみさんがピッタリの方でした。
 
また代表作の「放浪記」のお芝居は、その上演回数が2017回を数えたと言います。劇の中では高齢にもかかわらずでんぐり返りまで試みた、まさに体当たりの演技を貫き通した方でした。
 
でもおかみさんだとか、お母さんがピッタリのはまり役でしたが、ご本人には実のお子さんは一人もいなかったと言われます。また女優として芽が出たのがずいぶん遅く、41歳でこの放浪記の主役の座をやっと射とめ、以来89歳まで演技続けたのです。
 
逆に言えばそれだけ長いこと、下積みを続けたからこそ、その経験が生きて周囲の人々から慕われたのでしょう。それでもそんな苦労はおくびにも出さず、いつも明るい方でした。
 
亡くなったのもひっそりと入院先の病院で、長年連れ添った付き人とマネジャーの見守る中、まるで眠っているように穏やかに息を引き取ったと言います。そして皆さんに迷惑を掛けるからと言って、近親者だけで密葬を済ませたそうです。
 
このへんが気遣いのある森さんらしいところです。また入院先の病室には放浪記の台本まで持ち込んで、復帰に備えて毎日運動までしていたというから、凄いものです。
 
ドクタ-ストップがかかり、放浪記の公演を一昨年の10月に中止したのですが、まだまだやれるという、復帰の意欲を持ち続けていたのです。まさに生涯、現役だったのですね。
 
また来週、詳しく触れますが、水曜日に聴いてきた講演でも触れていたように、続けることとあきらめないことが大きな成果をもたらすということです。大女優・森光子さんのご冥福を心からお祈りいたします。