会長の”三行日記”

2011.09.12

あの日から半年 No.2071

あの大震災から半年が過ぎ去りました。被災地では依然として一向に進まない復旧で、今尚、多くの人たちが苦渋を強いられています。
 
そんな中、昨日のNHKのど自慢は被災地・岩手の久慈市からの中継でした。いつもより30分延長し、やはり被災地の宮城・福島からの参加者、各5名を加えた30名による特別番組でした。
 
この、のど自慢には少し泣かされました。出場者はほとんど、震災の影響を受けた方々ばかりで、やはり東北の方ですから、歌のうまい人たちが揃っていました。
 
そしてそれぞれの歌が、どれも身につまされるものばかりだったのです。「夕焼け雲」の、帰りたいけど帰れないとか、涙を拭いて抱きしめ合おうなどと、熱唱されると、こちらまで居たまらない気持ちになったものです。
 
中には特別賞を獲得した、家が崩壊し仮設住宅暮らしの人もいます。また9人暮らしの大世帯だったのが、東京や新潟、秋田など3箇所に今は分かれて住まなければいけない方もいました。
 
そんな辛い思いをしているのにもかかわらず、笑顔で元気よく唄う姿に、何とも言えない気持ちにさせられたものです。
 
また新聞にも「開業 青空コンビニから」という記事が載っていました。セブンイレブンのお店が8月6日になって、ようやくプレハブの仮店舗に移ったというお話です。
 
震災から2ヶ月経った後、経営者である夫婦は南三陸町の道路脇の青空の下、小さなテ-ブル一つでがれきの中に立ち、青空コンビニを再開しました。目の前をがれきを載せたダンプカ-が通り過ぎる影響で、家に帰ると髪の毛だけでなく、鼻や耳の中にも砂がいっぱい詰まっています。
 
なぜここまでしてやらなければいけないのか、その答えを教えてもらいました。夫婦は親類も誰もいない、この南三陸町に二人で15年前にコンビニを開きました。海が近いし、若者がいるからという見込みからです。
 
しかし完全にこの見込みは外れ、パ-ト従業員すら集まりません。そして廃業も考えた10年目になって、ようやく気づきました。都会のように不特定多数の来店を待つのではなく、人と人との繋がりで商品を買ってもらう、そんなお店でなければこの町では買ってもらえないことに。
 
こうして地域に溶け込み、受け入れられ始めた15年目の今年の春、津波に店舗を押し流されたのです。プレハブの店舗に通うお客が最初に向かうのは、商品棚ではなくレジに立ち寄り、「よっ、元気かい」と店主に声を掛けてから、買い物かごに商品を入れ始めると言います。
 
またこのお店のオ-プン後、陳列する商品も大きく変わったとのことです。近所の農家から頼まれた野菜とか、仮設住宅の仏壇に供えるお花や線香などが加わったからです。またどこの家にあるのが当たり前の商品もよく売れると言います。それだけ、生活の全てを押し流されてしまったからでしょう。
 
こうして単に商品を売るだけのお店ではなく、物と一緒に心まで支え合って、地域の人との大切な絆を守って、復興の足がかりともなっているわけです。のど自慢の出演者同様、いち早い、多くの方々の明るい笑顔の訪れる日を心から願うものです。